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自動売買に資産の何%を置くか — シグナル123回に対し発注45回だった実測から考える

著者: サム(会社員エンジニア・FX Bot開発・投資実践者)

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の投資商品を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

「自動」の範囲は、思っていたより狭かった

自動売買に資金をどれだけ回すか。判断の前提になるのは期待リターンより先に、「設計したとおりに動くのか」だと考えています。

実運用ログを見返したところ、動かないところが想像より多くありました。以下は2026年5月18日(初回取引)から8月7日(最終決済)までの81日間の実記録で、数値は2026年8月22日時点でデータベースから集計したものです。

実測1: シグナルの3分の2は、注文にならなかった

戦略が「買え」「売れ」と判断した回数と、実際に注文が出た回数を並べます。

戦略 エントリーシグナル 発注された 執行率
トレンドフォロー系 73 12 16.4%
AI判断系 39 29 74.4%
RSIダイバージェンス系 6 0 0.0%
セッションブレイクアウト系 5 4 80.0%
合計 123 45 36.6%

(シグナルログ自体は2026年5月15日から記録がありますが、初回取引前の7件を除いて運用期間に揃えています)

エントリーシグナル123回に対し、発注は45回。3分の2近くは注文にならずに消えています

見送りの理由はドローダウン制限、信頼度のしきい値、リスクリワード条件など複数あり、どれも意図して入れたものです。仕組みとしては正しく動いています。

ただし、RSIダイバージェンス系は6回シグナルを出して発注ゼロでした。この戦略は実質的に一度も稼働していません。バックテストの成績表には載っているのに、実運用では1円も動かしていない戦略が混ざっていたことになります。なお上の表はシグナルを1回以上出した4戦略だけを並べたもので、この期間には別通貨ペアで動かしていた戦略がもう1つあり、そちらはシグナル自体が0件でした。

さらに、決済シグナルのほうがもっと極端でした。決済シグナルを出したのはAI判断系だけで、19回のうち実際に決済されたのは1回です。「AIが利確・損切りを判断する」という設計は、実運用ではほぼ発動していませんでした。

実測2: 決済の主導権は、戦略側になかった

では実際には何がポジションを閉じていたのか。決済理由の内訳です。

決済理由 件数
損切り(ストップロス) 16
ブローカー照合による確定 8
ドローダウン制限による強制決済 10
利確(テイクプロフィット) 3
戦略判断による途中決済 1
決済理由の記録なし 7

戦略が能動的に決済したのは1件です。残りは、あらかじめ置いた損切り・利確の水準に価格が到達したか、リスク制御が強制的に閉じたか、ブローカー側との照合で確定したかのいずれかでした。

つまり運用の実態は「AIやロジックが売買している」ではなく、「入口だけロジックが選び、出口はほぼ機械的な水準と安全装置が決めている」でした。

実測3: 同じ売買でも、時間帯でコストが変わる

自前で記録したUSD/JPYのティックデータ29万5,429件(2026年5月24日〜8月8日)から、時間帯別の平均スプレッドを出しました。日本時間に変換して並べます。

日本時間 平均スプレッド 備考
9時台 0.0211円 最も狭い(東京時間)
10時台 0.0219円
11時〜翌4時台 0.033円前後 通常帯
翌5時台 0.0507円 拡大が始まる
翌6時台 0.1032円 最も広い(約4.9倍)
翌7時台 0.0681円
翌8時台 0.0392円 収束

午前6時台は最小値でも0.099円で、一時的な外れ値ではなく常時広がっています。最も狭い9時台の約4.9倍です。ニューヨーク市場のクローズとロールオーバーの時間帯にあたります。

24時間動く仕組みは、この時間帯にも普通に発注します。人が見ていれば避ける場所を、自動売買は避けません。避けさせたければ、そう書いておく必要がありました。

制御できない部分を数えてから、金額を決めた

以上をまとめると、実運用で確認できた「設計と挙動のズレ」はこうなります。

項目 実測
シグナルが注文になる割合 36.6%(123回中45回)
一度も発注されなかった戦略 シグナルを出した4戦略のうち1つ
決済シグナルの執行率(AI判断系) 5.3%(19回中1回)
安全装置による強制決済 10件(2026年8月6〜7日)
時間帯によるスプレッド差 最大約4.9倍

これらはバグではなく、いずれも意図して入れた制御が働いた結果です。それでも、外から見た挙動は「思ったとおりに動かない」でした。

投入した金額は4万円です。2チームに2万円ずつ振り分けました。結果として81日で-4,077円、約10%のマイナスになっています。

ここは正直に書いておきます。この4万円は、最初から「授業料」として置いたものではありませんでした。

運用を始めた時点では、自動売買は収益の当てにしていたチャネルの1つです。月数千円の利益を見込んで計画に組み込み、うまくいけば50万円まで増資する前提も置いていました。増資の判断基準もカレンダー、つまり「何月になったら増やす」という決め方でした。

その前提が変わったのは、負けたあとです。

時期 位置づけ 増資の判断基準
2026年5月(運用開始) 収益チャネルの1つ カレンダー基準(8月に増資)
途中 同上 9月へ延期、さらに12月へ延期
2026年8月8日 収益チャネルから除外し、技術検証とコンテンツの素材へ 実弾100件到達まで増資しない

「取引が100件たまるまで増やさない」という条件は、45取引を終えた翌日に決めたものです。先見の明ではなく、45件・81日では優位性の有無すら判定できなかったという実測から逆算して置き直しました。カレンダーで増資を決めていたら、判断材料がゼロのまま金額だけ増えていたことになります。

結果として言えるのは次の2点です。

1. 全損しても他の資産形成が止まらない額だったことは、たまたま効いた

金額の根拠は当時「少額から始める」程度でしたが、その控えめさが結果的に助けになりました。優位性が確認できていない手法に、生活や積立と競合する額を置かなくてよかった、というのが実感です。

2. 増資の条件は、カレンダーではなく母数で決めるべきだった

これは負けてから学んだことです。時間で区切ると、判断材料が足りないまま次のステップに進んでしまいます。

なお現在、この運用は稼働戦略をゼロにして停止しています。複数の通貨ペアで検証したところ、採用していた戦略の優位性が確認できなかったためです。

検討している人へ、数値で渡せること

一律に「何%が正解」とは言えません。資産規模も収入の安定性も目的も人によって違います。

ただ、配分を決めるときに使える材料としては、次のあたりが実測値として渡せます。

  • シグナルの3分の2近くは注文にならないことがある
  • 「AIが決済する」設計でも、実際の執行は5%程度にとどまることがある
  • 個々の損切りより先に、口座全体を見る安全装置がポジションを閉じることがある
  • 執行される時間帯によって、スプレッドが最大約4.9倍変わることがある
  • 81日・45取引では、優位性の有無を判定できない(実際に判定できず停止した)

期待リターンから逆算するより、これらの「効かない側」を数えてから金額を決めるほうが、少なくとも自分には納得のいく決め方でした。

数値の出どころ

すべて運用中のデータベースおよび自前で記録したティックデータから、2026年8月22日時点で直接集計しています。累計損益・勝率の最新値はAutoTrade 実績ページで自動更新しています。

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