投資比較

自動売買で負けた45取引を全部分解したら、損失の82.6%が「売り」から出ていた

著者: サム(会社員エンジニア・FX Bot開発・投資実践者)

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の投資商品を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

負けた記録のほうが、たぶん役に立つ

自動売買の話は「月利◯%」から始まることが多いのですが、こちらは逆です。3ヶ月弱動かして-4,077円。運用資金4万円に対して約10%のマイナスでした。

ただ、45取引すべてがデータベースに1件ずつ残っています。エントリー価格、決済価格、損益、決済理由、保有時間。集計値ではなく元データがあるので、どこで負けたのかを分解できます。

期間は2026年5月18日から8月7日。通貨ペアはUSD/JPY。以下の数値はすべて2026年8月22日時点でデータベースから再集計したものです。

全体像

項目
決済済み取引 45件
勝ち / 負け / 引き分け 12件 / 32件 / 1件
勝率 26.7%
確定損益 -4,077円
プロフィットファクター 0.414
平均保有時間 20.6時間

月別に並べるとこうなります。

取引数 勝ち 確定損益 うち買い うち売り
2026年5月 2 2 +614円 +614円 0円
2026年6月 18 5 -2,747円 -1,133円 -1,614円
2026年7月 9 2 -986円 -207円 -779円
2026年8月 16 3 -957円 +16円 -973円

最初の2取引が両方勝ったあと、6月に一気に崩れています。そして6月以降はどの月も、売りの損失が買いの損失を上回っています。

分解1: 売買方向 — ここに損失の82.6%があった

方向 取引数 勝ち 勝率 確定損益 平均利益(勝ちのみ) 平均損失(負けのみ)
買い 25 10 40.0% -710円 +285円 -254円
売り 20 2 10.0% -3,367円 +18円 -189円

買いは25取引のうち勝ち10・負け14・損益ゼロ1件です。平均損失は損益がマイナスだった取引だけで計算しています。

売りは20取引して2勝。しかもその2勝の平均利益が18円です。プラスで終わった2回も、実質的には値幅がほとんど取れていません。

確定損益-4,077円のうち、売りが-3,367円。82.6% です。買いだけを取り出せば-710円で、これは手数料と地合いの範囲内という見方もできる水準でした。

なぜ売りだけがここまで一方的に外れたのか。自前で記録していたUSD/JPYのティックデータ(29万5,429件・2026年5月24日〜8月8日)で相場を確認すると、答えははっきりしていました。

最安値 最高値 月平均
2026年5月(24日以降) 158.764 159.648 159.233
2026年6月 159.374 162.670 160.776
2026年7月 157.463 163.976 162.395
2026年8月 155.293 158.566 157.585

6月と7月、ドル円は159円台から164円近くまで上昇しています。上昇局面で売り続ければ、こうなります。

戦略の中身を疑う前に、方向を疑うべきでした。

分解2: 決済理由 — 損切り16回、利確3回

決済理由ごとに集計するとこうなります。

決済理由 件数 合計損益 1件あたり
損切り(ストップロス) 16 -3,927円 -245円
利確(テイクプロフィット) 3 +1,195円 +398円
ブローカー照合による確定 8 +551円 +69円
ドローダウン制限による強制決済(AI側) 8 -90円 -11円
ドローダウン制限による強制決済(ルール側) 2 -277円 -139円
AI判断による途中決済 1 -17円 -17円
決済理由の記録なし 7 -1,512円 -216円

最後の「記録なし」7件について補足します。いずれも2026年6月3日から6月11日に決済された取引です。ただし同じ時期の他の取引には理由が記録されており(6月1日・4日・9日・10日はいずれも記録あり)、単純に「記録機能を入れる前だった」では説明がつきません。なぜこの7件だけ理由が欠けているのかは未確認です。損益自体は記録されているので集計には含めていますが、理由は復元できませんでした。データの欠けは欠けとして書いておきます。

注目したいのは損切りと利確の関係です。

1回あたりで見ると、利確が+398円、損切りが-245円。損失より利益のほうが大きい設計になっています。いわゆるリスクリワード比は1.6程度。設計としては悪くありません。

問題は回数でした。損切り16回に対して利確3回。比率にして5.3対1です。1回の利益が損失の1.6倍あっても、5.3倍の頻度で損切りされれば追いつきません。

リスクリワード比を整えることと、勝てることは別の話でした。

分解3: 8月に起きたこと — 安全装置が先に止めた

8月は決済理由の内訳が他の月と違います。ドローダウン制限による強制決済が10件(AI側8件、ルール側2件)、日付は8月6日から7日に集中していました。

このとき相場がどう動いていたかを、自前のティックデータで日別に見ます。

日付 日中平均 安値 高値
8月3日 156.807 155.293 157.861
8月4日 157.649 157.223 157.952
8月5日 157.639 157.322 157.866
8月6日 158.048 157.608 158.549
8月7日 158.268 157.043 158.566

8月3日に155円台まで下げたあと、6日・7日にかけて158円台へ切り返しています。売りポジションを持ったのは8月5日から7日、価格帯は157.4円から158.4円。入った直後に上へ動かれた形です。

含み損が積み上がり、8月6日から7日にかけてドローダウン制限が作動しました。強制決済された10件の損益はAI側が合計-90円、ルール側が-277円。1件あたり-11円から-139円で、いずれも小さな損失で閉じています。

同じ期間の損切りは1件あたり平均-245円でした。強制決済のほうが浅い水準で切っています。含み損がさらに膨らむ前に止めた、という読み方ができます。

安全装置としては、設計どおりに働いた月でした。

この45取引から持ち帰ったこと

方向を外すと、他の工夫はほぼ効かない

損失の82.6%が売りから出ていました。指標の組み合わせやパラメータの調整でこの差は埋まりません。

リスクリワード比は、単独では安全性の指標にならない

1.6という比率は健全に見えますが、損切り16回対利確3回の前では意味を持ちませんでした。比率と頻度はセットで見る必要があります。

安全装置は、個々の判断より浅いところで切る

ドローダウン制限による決済10件は1件あたり-11円から-139円。同期間の損切り平均-245円より浅い水準で閉じています。口座全体を見る仕組みは、1取引ずつの損切りより早く反応しました。ただしこれは「相場が戻る前に降りる」ことも同時に意味します。水準を決めるときは、両方が起きる前提で置くものでした。

単一の通貨ペアで得た結論は、他で反転しうる

実際に約定したのはUSD/JPYだけです(別通貨ペアでも戦略を1つ動かしていましたが、期間中の発注はゼロでした)。のちに他の通貨ペアで検証したところ、同じ戦略の成績が逆方向に振れることが分かり、2026年8月8日以降は稼働戦略をゼロにして停止しています。1つのデータセットで良い結果が出ても、それは採用の理由になりませんでした。

数値の出どころ

すべて運用中のデータベースから、2026年8月22日時点で直接集計しています。ティックデータの件数、取引の1件ごとの損益、決済理由はいずれも実記録です。

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